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2006年3月27日 (月)

持続不可能性

このブログでは、サステイナブル(持続可能)なものについて紹介しているのですが、その反対の「持続不可能」な状態を知ることにより、その逆である持続可能な状態を知るというアプローチもあります。

最近、考古学的、あるいは歴史学的な見地から生物種や文明の滅亡について書いた本が多く書かれています。私自身もまだきちんと読んだわけではないのですが、とても興味深い内容が書いてあるようですので、その概要をご紹介したいと思います。

[暴走する文明] ロナルド・ライト著、星川淳訳、NHK出版

旧石器時代から、現在に至るまで、人類が歩んできた文明の勃興の歴史を分析し、それらに共通する滅亡のパターンを述べています。副題にある「進歩の罠」というものが、その共通するパターンということなのですが、この「進歩の罠」というものは、どの様なものでしょうか。まず、一つのポイントは現在まで1万年間の気候です。人類が生まれてから100万年以上が経過していると言われていますが、その中で、現在までの1万年が一番安定しているというのです。その安定ゆえに人類は、それまでの狩猟主体から、農業を基盤とした文明や都市の形成へと「進歩」することができました。そしてその「進歩」は、様々な競争、そして戦争を生み出し、その規模は拡大する一方です。歴史が証明する事実として、人類は、「進歩」に対して、非常に貪欲であり、それが限界を迎えて自らが滅びるまで続けるというのです。私達がこの「進歩の罠」から抜け出すには、どうしたら良いのでしょうか...

[人類は滅亡する] マイケル・ボウルター著、佐々木信雄訳、朝日新聞社

こちらは、歴史学ではなく、さらに長い時間を研究する「考古学」に知見から非常に長期的に人類の滅亡について論じています。まず、考古学でもっとも有名な絶滅と言えば、恐竜の絶滅でしょうか。それ以外にも、過去の生物の発生と滅亡に至るまでの共通するパターンを調べることにより、人類が滅亡に至るプロセスを冷徹に分析しています。人類が客観的に自分達の地球環境の中での今の立場を正しく認識することができれば、もう少し良い方向に進むことができると思うのですが。

[文明崩壊(上)(下)] ジャレド・ダイアモンド著、楡井浩一訳、草思社

これは上下2冊に分かれた大作です。副題は「滅亡と存続の命運を分けるもの」となっています。多くの文明の滅亡と存続の事例により、共通のパターンを見つけようとしています。先ほど、紹介した「暴走する文明」と共通する事例としては、有名な「イースター島」のものがあります。あの石像は何の為に作られ、それを作った民族はどの様な運命を辿ったのか。非常に興味深い話ですが、島という限られた自然資源しかない空間では、森林の消滅などの環境問題がもっとも大きな原因となっていたようです。過去の事例では、これ以外に「マヤ文明」、「グリーンランド」などが詳細に書かれています。

下巻では、滅亡せずに存続し文明の事例を紹介し、その道筋を示しています。その中で江戸時代の日本が紹介されいるのは、とても興味深いことです。さらに、現代の社会で起きている様々な危機についても述べています。アフリカの人口危機による争い、中国の環境問題などです。

第4部では、将来に向けた分析と提言を行っています。まず、何故、社会が持続できる正しい判断をすることができないのかということを分析していますが、環境資源の枯渇については、「共有地の悲劇」という有名な理論があります。それ以外にも様々な分析を行っていますので、きちんと本を読んだ後に紹介したいと思います。

最後に、著者が警告しているとりわけ深刻な「12の環境問題」について列挙します。これらはいずれも放置すれば、文明の崩壊つながる問題ばかりです。

  1. 自然の棲息環境
  2. 野生の食料源(漁業資源について)
  3. 生物の多様性
  4. エネルギーの限界
  5. 土壌被害
  6. 真水の限界
  7. 光合成能力の限界
  8. 毒性化合物
  9. 外来種
  10. 温室効果ガス
  11. 人口増加
  12. 人口増加による資源消費、廃棄物の深刻化

01:04 午前 サステイナブル | | コメント (0) | トラックバック (1)

2006年3月19日 (日)

環境基本計画への意見募集その2

先月まで、第三次環境基本計画(案)への意見募集(パブコメ)がありました。今回の環境基本計画には、持続可能性に関する考え方が多く取り入れられており、従来の環境基本計画から一歩も二歩も前進したものになっています。これを実効性のある政策や各主体の取組みにつなげられれば良いのですが... 皆さんも、是非、一度読んでみてください。

私も、初めてのこの様な「パブコメ」に意見を書いて見ました。書こう書こうと思いながら、結局〆切ぎりぎりに書いたので、なかなか自分の考えやきちんと書ききれていませんが、ひとまずここに公表してみたいと思います。

[中央環境審議会へ提出した意見] ※は案文中の整理番号

(1) 政府内のさらなる連携強化 ※30101

 環境省、経済産業省、農林水産省、国土交通省を始めとする関係省庁の連携をさらに強化すると共に、3年後を目標にこれらの省庁の関係部局を統合し、持続可能な社会の構築を目的とする「持続可能な社会省(仮称)」の設置を検討することを明記する。

(2) 各主体の役割 ※21724

政府のリーダシップを強化すると共に、国民が日頃生活の中で関わっている事業者(企業)、NPOおよびコミュニティなどによる環境配慮取組みがさらに進むように、環境価値の市場経済への内包やインセンティブを与える政策へ取り組む。特に広く事業者(中小企業も含む)の取組が、NPOやコミュニティの活動と連携する政策が重要である。

(3) 環境教育 ※21816

「持続可能な開発のための教育」への取組をもっと全面に打ち出し、これまでの補完的な環境教育ではなく、21世紀を生きるための必須要件として、学校教育だけではなく、社会人教育、企業内教育において体験学習や実践を重視した教育体系を再構築する。

(4) 気候変動への取組み ※21135

地球温暖化による気候変動のリスクが高まっている現在、これまでの経済優先の政策や国土開発を方向転換し、気候変動リスクの低減に向けた取組を重視していく。具体的には、国土の2/3を占める森林の積極的な保全と活用、人口の集中した都市の再構築など、長期的なビジョンに基づく取組が重要である。

(5) 京都議定書の目標達成とポスト京都議定書への取組 ※12602

国際社会へ約束した6%の削減目標を必ず達成するには、それ以上の国内目標を果敢に設定することが必要であり、それにより目標達成した後の今後50年を睨んだ政策目標を打ち出す必要がある。

(5) 環境経済的な政策の積極的な推進 ※12102

環境税、排出量取引など環境経済的な政策を、積極的に活用していくことが重要である。特に国内事業者とのパートナーシップを強化し、環境配慮を重視した産業構造へ誘導して行く必要がある。

(6) エネルギーや交通など産業政策への取組  ※21111 ※21124

環境への大きな負荷となっている化石燃料の使用量を大幅に減らすためには、エネルギー政策への積極的な関与が必要である。再生可能エネルギーの利用拡大はもちろん、省エネルギーへの本格的な取組、自動車利用の低減、公共交通の拡充、都市の再構築など産業政策と環境政策を連携した新たな取組が必要である。

12:27 午前 環境 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2006年3月18日 (土)

エコロジカル・フットプリントその2

今週は、持続可能性指標として有名なエコロジカル・フットプリントの第一人者マティース・ワケナゲル(Mathis Wackernagel)氏(Global Footprint Network主宰)のセミナーがあり、参加して来ました。主催は、私も会員になっているNPO法人エコロジカル・フットプリント・ジャパン(EFJ)で、2日間の講演で、100名近い参加者があり、関心の高さがうかがえました。

[マティース・ワケナゲル来日講演会]

以前もエコロジカル・フットプリント(EF)についてはこのブログに書きましたが、新しいトピックもありましたので、それを中心に書きたいと思います。

まずは、ワケナゲル氏が来日した目的ですが、EFをGDPの様に国の政策の主要な指標として扱ってもらうことを各国の政府にアピールしている活動の一環だということです。実際に今回の来日でも環境省への働きかけを行っているそうです。タイミングよく第3次環境基本計画(案)で指標の活用が含まれていて、環境省もとても前向きだったそうです。是非、実現すると良いと思います。

来日のもう一つの目的は、EFを活用するパートナーを探すことです。企業や地方自治体などがEFを活用して持続可能な社会を目指す活動を継続的に支援するパートナーが是非とも必要なようです。自治体でのEFの活用は、これまでもヨーロッパを中心に行われて来ました。その中の成功例として米国カリフォルニア州ソノマ郡のサステイナブルソノマを挙げていました。また、世界中の400以上の自治体が参加しているICLEIでも5都市ほどのパイロットプロジェクトを行うことを計画しているようです。

コミュニティにおいてEF使う際に気をつけた方が良いことを、これまでの経験から以下の様に述べていました。

  • 何に使うのか?を常に考える
  • 不利益と利益のバランスを考える
  • 小さく始めることが大切
  • ゆっくりやることが結果的に早く進むことになる

次に、国別に国連の人間開発指標(HDI)とEFの相関をプロットしたグラフです。これを見てわかるのは、右上の持続可能な領域にある国が一つも無いことです。かろうじて南米の国々がこの領域に近いことがわかります(HDIが0.8以上で、EFが平均値の1.8より小さい領域)。

EF1



続いて、"Footprint Neutral"という考え方です。EFの観点から、EFが増えた分をEFを減る活動で補填するという感じでしょうか。カーボン・ニュートラルと同じ様な考え方です。例えば、家を建てるときには、なるべくEFが小さくなるように建てるのはもちろんですが、それでも増えた分を、別の活動(省エネ、植林など)でできるだけ差し引きゼロの状態にするということだそうです。とても面白い考え方だと思いますし、わかりやすいですね。

それから、昨年の10月にWWFが発表したアジア太平洋地域に関するレポートについてです。このレポートには、EFを用いて様々な観点からアジア太平洋地域の持続可能性について書いてあります。私自身は、この様なレポートが公表をされたことを知りませんでした。その前のヨーロッパのレポートは、知っていたのですが... 日本のことも沢山出ている様ですので、是非、読んで見たいと思います(英語ですが...)。WWFのLiving Planet Reportのページからダウンロードできます。

[WWF Living Planet Report]

[WWF 生きている地球レポート アジア太平洋2005(英語)]

EF3

そして日本のEF勘定の話です。日本のEFの収支は以下の様になっています。

フットプリント(消費側): 4.27 gha/人
環境容量(供給側):     0.75 gha/人
赤字分:                    -3.52 gha/人

つまり、この3.52(gha/人)分の環境容量は、海外に頼って生活しているわけです。そして、このフットプリントの4.27という値は、世界平均2.19の約2倍となっています。実は、この2.19という数字も、地球全体の環境容量1.8に比べるとすでに1.2倍となっています。現在の人類は、地球1個の環境容量だけではすでに生活できなくなっています(環境の資産を食いつぶしている状態)。

最後に、EFに関するストック(資産)の話がありました。EFが、地球全体の環境容量を超えたのが、1980年頃と言われていますが、それからすでに2.5個分の地球の環境容量に関するストックを食いつぶしています。もし、このまま進んでいったら、50年後はどうなってしまうのでしょうか。それをシナリオで示していました。もし、これからある程度の低成長のシナリオで進んだとしても、50年後にはEFは現在の倍以上になり、地球50個以上のストックを食いつぶしてしまうことになるそうです。これは可能なのでしょうか?恐らくそれ以前に「成長の限界」を迎えることは、明らかです。それを見越して、持続可能な発展の方向に世界全体が方向転換できれば、地球18個分程度で済むというシナリオもありました。

非常に多くの示唆に富む有意義な講演会でした。講演会の後に日本での第一人者である和田善彦先生ともご一緒に会食に参加して直接お話しを聞いたり、本にサインをもらったりしましたが、ワケナゲル氏はとても気さくな方で、EFを普及させることに本当に情熱を注いでいて、それでいて自然体なところがとても感銘を受けました。ワケナゲル氏も、とても有意義な来日になったと喜んでいました。薬膳の中華もおいしかったです。

また、新しい情報があれば、書きたいと思います。

11:54 午前 環境 | | コメント (0) | トラックバック (2)