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2006年8月12日 (土)

スウェーデンの「持続可能な発展」指標

前回に引き続きスウェーデンでの「サステイナブルなもの」として「持続可能な発展」指標についてお送りします。2001年にスウェーデンでは持続可能な発展のための最初の指標群として30個の指標が政府統計局から発表されました。これらの指標は、従来からある「環境」「社会」「経済」という3つの軸ではなく、次のように持続可能性のための独自の4つのテーマに分類され、それぞれのテーマの中に「環境」「社会」「経済」についての指標が含まれているという構成になっています。

(a)効率性(Efficiency)
(b)公平性(Contribution and Equality)
(c) 適応性(Adoptability)
(d) 次世代のための価値と資源(Values and resources for coming generations)

スウェーデンでは、1989年に始まったナチュラルステップを始めとして、先進的な持続可能性への取組みが政府、NGO、産業界、国民など様々なレベルで行われてきており、この指標群はこれまでのスウェーデンでの持続可能性に向けた様々な取組みが反映された内容になっています。2003年に発表された持続可能な発展のための国家戦略[3]に引き続き、2006年3月に発表された国家戦略”Critical Challenges - a Further Elaboration of the Swedish Strategy for Sustainable Development”では12のヘッドライン指標が用いられています[5]。

2001年に発表された指標群ではまず、「効率性」をテーマとして取り上げられている5つの指標において、いずれも持続可能な社会に必要な資源の効率的な利用について示しています。

(1) 資源生産性に対する一次エネルギー供給量
(2)労働生産性(勤務時間あたりのGDP)
(3)ごみの排出量
(4)健康状態と健康のための支出
(5)高校への未進学率

次のテーマである「公平性」は、持続可能な発展に伴う不利益と利益をいかに公平に分かち合っているかを示しており、次に9つの指標から構成されています。

(6)世代別人口
(7)総生産の地域格差
(8)交通量(人員および貨物)
(9)可処分所得(所得格差)
(10) 男性の給与に対する女性の給与の比率
(11) 投票率
(12) 犯罪や暴力の脅威にさらされた人口の割合
(13) ISO認定数、エコ学校の数、森林認証の数
(14)エコラベル製品・サービスの選択率

3つ目のテーマである「適応性」には、次の7つの指標があり、持続可能性に必要な新しい変化に対する適応性などが様々な視点から示されています。

(15) 一次エネルギーの構成
(16) GDPに占める投資の割合
(17) 起業数と倒産数
(18) 教育レベル
(19) GDPに対する技術開発の割合
(20) 雇用
(21) 有機農業

最後のテーマである「次世代のための価値と資源」は、持続可能な社会にとても重要な視点でありかつ評価が難しいと考えられますが、次の9つの指標が示されています。

(22) GDPに対する財政赤字
(23) 社会福祉、教育および安全に対するGDPの割合
(24) 資源消費量
(25) 化学物質による汚染
(26) アレルギー性ぜんその流行
(27) 保全地域
(28) バルチック海の漁業資源
(29) 絶滅あるいは絶滅危惧種
(30) CO2排出量

それぞれの指標は、過去20年程度のトレンドがグラフと共に提示されており、指標としての適合性と持続可能性に対する影響について客観的に評価されています。また、一部の指標については、将来への展望も述べられています。
 「効率性」の指標の中では、エネルギーの資源生産性が向上すると共に労働生産性も上昇を続けています。ただし、ごみの排出量は増え続けており、教育の効率を表す高校進学率が低下し続けています。
 「公平性」の指標としては、平均寿命の延びと共に年齢構成の高齢化が進んでおり、交通量は人員・貨物共に伸び続けています。高額所得者ほど、可処分所得は増えており格差の広がりが見られるが、男女の所得格差は広がっていません。投票率がさがりぎみで、犯罪の増加傾向が見られます。環境に対してはISOの取得事業者は増加を続け、エコラベル製品の購入が増えて、森林認証も進んでいます。
  「適応性」の指標では、一次エネルギーの供給量が少しずつ増え続ける中でバイオ燃料などの再生可能エネルギーの割合は引き続き増えています。原子力発電の廃止の方向や脱石油宣言[4]など世界に先駆けた動きが注目されています。GDPに対するレベルは近年の落ち込みから回復傾向にあり、起業数や技術開発への投資と共に有機農法の農地も増えています。
  「次世代のための価値と資源」の指標に関しては、先進的な取組みをしているスウェーデンであっても全般的に前世代から受け継いだものを次世代に残すことが難しくなっている現状を表しています。政府の財政赤字については減少傾向が見られるものの、教育や健康そして安全に対する予算は伸び悩んでいます。資源や化学物質の消費量については、ほぼ安定しているが、あまり減少もしておらず再生可能な資源の利用が求められています。気候変動に大きく影響するCO2の排出量は横ばいの状態が続いており、アレルギー性のぜんそくの増加や漁業資源の減少、絶滅危惧種の増加が続いています。

 持続可能な発展のための政策を推し進めているスウェーデン政府は、この指標群を政策の中に明確に位置づけ活用しようとしています。2003年には、政府統計局が改訂版を国内で発表していますが、個人の健康、消費や雇用および交通などの社会の動向および産業活動に伴う環境への影響に焦点をあてています[2]。2005年には持続可能な発展省が設立され、持続可能性に関する様々な政策が横断的に実施されており、その動向は北欧諸国にとどまらずEUや全世界から注目され続けています。

[参考文献]

[1] “Sustainable Development Indicators for Sweden –a first set 2001”, Statistics Sweden/Swedish Environmental Protection Agency, 2001

[2] “Sustainable Development Indicators based on environmental economic and social statistics”, Statistics Sweden, 2003

[3] “A Swedish Strategy for Sustainable Development – Economic, Social and Environmental”, Swedish Ministry of the Environment, 2003

[4] “Making Sweden an Oil-Free Society”, Commission on oil independent, 2006

[5] “Sustainable Development”, Government Offices of Sweden, 2006

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