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2006年11月30日 (木)

木質ペレットはいかが?

これまでも木質バイオマスのエネルギー利用ついての記事を書いて来ましたが、今回はその中でも最近注目されている木質ペレットについてのご紹介です。木質ペレットは、製材所で発生するおが屑などを圧縮してペレット状(直径6mm,長さ数cm程度)にしたバイオマス固形燃料の一種です。スウェーデンをはじめヨーロッパでは、すでに石油に代わる暖房や給湯の燃料として広く普及しています。その状況は、「スウェーデンのバイオマスエネルギー事情」にも書きました。

木質ペレットは、森林資源が豊富な国にとってはとても魅力的な再生可能エネルギーなのですが、日本国内での普及状況はどうなっているのでしょうか?日本でも1970年代の石油ショックの頃に一度普及が進む機会がありましたが、その後の石油価格の下落によりほとんど生産されなくなっていました。数年前から国の林業に対する助成やバイオマスに対する政策もあり、徐々に生産量が増え年間8千トン程度の生産量まで回復しています。ただし、日本の森林資源の豊富さから考えると、すでにヨーロッパの各国で行われている数10万トン規模での生産に対してわずかな量に留まっているのです。

これには様々な事情があり、木質ペレットの需要側と供給側それぞれから考える必要があります。端的に言うと、需要側では従来の化石燃料と比較して使用するメリットが小さくみえるということがあります。最近の石油価格の高騰により、熱量あたりの価格はだいぶ近づいて来ましたが、これまではペレット用の燃焼器具(ストーブやボイラーなど)の導入価格が高くて、まだまだ使いにくい現状がありました。供給側では、大規模な工場が少なく、手間のかかる間伐材や林地残材を直接原料として使う形態が多いため、原料の調達コストや製造コストが高くなっています。

この状況を打開する取組が全国の林業が盛んな地方で始まっています。その中のひとつ北海道の足寄町で、先日、木質ペレットに関するシンポジウムがあり参加して来ましたので、その概要をお伝えしたいと思います。主催は、ペレットクラブと足寄町木質ペレット研究会で、基調講演、パネルディスカッション、屋外展示、見学会などがありました。

[基調講演]
NERCセンター長の大友詔雄先生が基調講演を行いましたが、国内外の木質ペレットを巡る全体像をつかんだ内容となっていました。主な内容は以下のとおりです。

  1. 問題提起: 国内ペレット生産量と海外との比較(国内2005年で8000t/年程度)ドイツでは、灯油が7円/kWhに対してペレット5円/kWhと安定し、年間25.5万トンを28の工場で生産している。この違いはなにか?
  2. 北海道内の状況: 1998年からバイオマスを「ローカルエネルギー」として検討を始め、北海道の事業として「北海道型ペレット燃焼器の開発指針」策定や、今年度の実証試験(農業用、セントラルヒーティング用)につながっている。ペレット工場も今年度新たに4ヶ所程度が生産を開始し、需要の拡大が課題となっている。
  3. 足寄町の取組: 1999年に九州大学演習林での研究が発端となり、2001年に新エネビジョンの策定、2004年にペレット工場建設とつながった。ペレット生産は、地域の「とかちペレット共同組合」が行い、産官学の「足寄町木質ペレット研究会」が様々な検討を継続的に行っている。
  4. EUに学ぶこと: 木質ペレット利用先進国としてEUの動向を紹介。環境税により、石油や天然ガスよりもペレットが確実に安価。ペレット生産量がこの5年間で確実に増加(消費量が生産量を上回る):1位スウェーデン(90万トン)、2位デンマーク(35万トン)、3位オーストリア。家庭用ペレットボイラー導入台数:スウェーデン年間5万台以上(2004)。家庭用ペレットストーブ導入台数:イタリア年間12万台以上(2004)。大規模ペレット工場が主流:生産容量140万t/年、工場数30以下(日本は、生産容量1万t/年以下、工場数18)。森林面積率と森林利用率: スウェーデン面積率75%で利用率7割)(日本は、面積率68%で利用率4割)バイオマスの輸出入がEUではとても盛ん。
  5. 今、何を考えるべきか? 「自然に還るごみ」日本の輸出入物質収支: 輸入7.5億トン/年、輸出1億トン/年。総排出物:6.5億トン/年 + 水2億トン/年 = 8.5億トン/年。その内訳:エネルギー消費分4億トン/年、食料1億トン/年、廃棄物3億トン/年。最終埋立て: 1億トン/年。「バイオマス・リファイナリー」を構想する(cf. 石油リファイナリー)
  6. 地産地消を支えるもの: 雇用の創出、ペレット品質基準、バイオマスの集材コスト高の課題
  7. まとめ: 過去の教訓に学ぶ(古代文明の衰退原因。世界の食料需給の逼迫(水資源問題、地球温暖化)。石油価格の動向。「ソフトな技術をもつ社会」と「ハードな技術をもつ社会」

[屋外展示]

展示はペレットストーブがほとんどでしたが、国内製造メーカ(シモタニ、金子農機、サンポット、明和工業、山本製作所、石村工業など)のものが多く展示されていたのが印象的でした。技術的にもデザイン的にも国産のものが普及する兆しがあります。ペレットボイラーとしては、農業用木質バイオマスボイラー(出力36kW)がデモを行っていました。こちらはまだまだこれからの分野です。また、ペレットによるパン焼きやピザ焼きの実演が行われ、試食ができるようになっていました。話によると足寄町内にペレットバーナを開発する会社があり、パン焼き用の石窯などのためにバーナを開発したそうです。このパン屋さんは、帯広近郊にペレット石窯を使ったパン屋を開業し、好評だそうです。

[パネルディスカッション]

パネルディスカッションとして、「足寄町のペレット導入までの軌跡と地産地消の課題」が行われました。足寄町のこれまでの取組について、産官学がそれぞれの役割を果たすことによりここまで実現できたことを確認していました。今後については、いかにこの取組を経済的にも人材的にも持続することができるかということが課題となっていました。

[見学会]

(1) 新庁舎とペレットボイラー
最初に竣工したばかりの新庁舎を見学しました。竣工以来すでに2000人の視察を受入れており、2階建ての新庁舎(延床面積3500m2+エネルギー棟700m2)は、一部を除き足寄町内産のカラマツの集製材(300m3程度)を主要な構造体に使用し、この種の木造建築としては、国内最大規模とのこと。基本的に空調は暖房(パネルラジエータ+ファンコイル)のみで、地中に給気ダクトを通して地中熱を利用した換気を行っているそうです。

(2) ペレット工場
最後にペレット工場(とかちペレット共同組合)の見学を行いました。施設は廃校となった小学校の建物(体育館)や校庭を利用しており、2005年11月より生産を開始して約1年が経過したところだそうです。

国内の木質ペレットの状況に関しては、ヨーロッパ各国に5年以上遅れていると言われていますが、日本にも潜在的な森林資源や技術力、そして環境に対する意識は十分にあると思いますので、地域によってはここ数年で急速に木質ペレットが普及する可能性があります。ちょっと長くなってしまいましたが、こんな木質ペレットはいかがですか?

07:09 午後 バイオマス | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月13日 (月)

ピークオイルと地球温暖化

これまで私達の生活は、その多くの部分を安い石油などの化石燃料に頼って来ました。今でこそ発電に石油が使われる割合は10%以下になっていますが、全エネルギーの供給を表す一次エネルギーの割合では約50%を占めており、その石油の90%近くを中東地域からの輸入に頼っている状態です。1970年代の石油ショック以降、エネルギーの多様化はある程度進みましたが、日本経済の石油への依存度はいまだに非常に大きいと言わざるを得ません。

そんな中、昨年あたりからガソリンや軽油などの輸送燃料、そして重油や灯油などの加熱用の燃料が高騰を始めました。これは世界的な原油価格の高騰が直接の原因となっており、その根本的な原因が取り沙汰される様になってきています。中国などの発展途上国の石油の需要は急速に増えており、中国はすでに世界の一次エネルギーの15%を消費しています(日本は6%)。石油の供給量と需要量のバランスにより、その価格が決まると考えると、今後、石油の生産量が消費量に追いつかずにこのギャップが大きくなればなるほど、石油の価格は上昇を続けることになります。これまで増え続けて来た石油の生産量がピークを迎え、増え続ける需要に追いつかなくなる状態、これが「ピークオイル」です。

この「ピークオイル」がいったいいつ来るのか、「ピークオイル」を迎えた世界経済はどの様な影響を受けるのかを、専門家の知識を駆使し、様々な観点から書かれた本の日本語訳が最近出版されました。地球温暖化との関連や再生可能エネルギーの可能性について詳しく論じられていることが、従来のピークオイル本と大きく異なる点です。

[ピーク・オイル・パニック」 ジェレミー・レゲット著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4861821037/somethingsust-22

著者は、石油の採掘に欠かせない地質学の専門家で、長らくその業界の研究者やコンサルタントを努めていました。石油業界では、「早期ピーク論」と「遅いピーク論」があるとされていますが、ここ数年は、様々な証拠から「早期ピーク論」が優勢になりつつあります。「早期ピーク論」では、ここ数年以内にピークを迎える説がもっとも有力であり、今まさにピークを迎えつつあるということが言われており、それを認めたくない多くの業界(石油業界など)と激しく対立しています。この「早期ピーク論」を支持する人達が集まっているのが、ASPO(Association for the Study of Peak Oil&Gas)であり、ピークオイルに関する様々な情報を発信しています。今年の10月に米国でピークオイルに関する国際会議も開催されました。また、昨年末には米国議会においてピークオイルに関する公聴会も開かれています。

その他、多くのピークオイルに関する本が昨年あたりから日本でも出版されています。

[石油の終焉] ポール・ロバーツ著
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4334961819

[石油 最後の1バレル]  ピーター・ターツァキアン著
http://www.amazon.co.jp/gp/product/490123496X

いずれにしてもピーク・オイルが近いうちにやって来るとして、それをどう判断し、どの様な影響を受けるかを真剣に考える必要がありますが、その内容は人により大きく異なってきます。著者はその影響の大きさについて、大恐慌や世界大戦などの戦争と比較しており、世界経済への影響は1970年代の石油危機の比ではなく、まさに世界的な経済や社会の「パニック」と呼ぶべきものになるだろうと予測しています。そしてエネルギー資源の争いは過去の歴史を振り返ってもわかるとおり、戦争へとつながる可能性が高いのです。各国や各地域、そして企業や各個人は、その「パニック」の影響をできるだけ小さくすることを今から考える必要があります。エネルギーに関して言えば、それが再生可能エネルギーへの早急なシフトである(本格的な普及はパニックの後になる可能性が高いが...)。

日本においても、今年8月に「もったいない学会」が立ち上がり、石油資源がピークを迎えたときのことを想定した啓蒙活動を開始しています。会長の石井吉徳先生は、7月にピークオイルに関する本を出版しており、ご自身のホームページにおいても資源の価値を客観的に評価するEPR(Energy Profit Ratio)などの指標の重要性を強調しています。

[石油最終争奪戦-世界を震撼させる「ピークオイル」の真実]

地球温暖化は、まさに化石燃料を大量に消費した結果として発生しています。石油がピークを迎える時期と、地球温暖化が気候変動などの目に見える形で現れた時期とが一致していることはとても興味深いと思います。産業革命以降、ピークを迎えるほどの大量の化石燃料を消費したことが地球温暖化の直接的な原因になっているという言い方もできるかもしれません。また、ピークを迎えて石油の価格が高騰するので、世界中で石油の使用量を減らし、地球温暖化を防止する取組みをせざるを得ません(ここで、石炭やオイルサンドなどの非在来型石油に積極的に手を出してしまうと取り返しのつかないことになります)。

「ピーク・オイル」は、まさに現代文明を支える資源の「成長の限界」の象徴であり、地球温暖化による気候変動に対する警鐘のひとつとして重視する必要があります。もし、可能であればパニックによるハードランディングではなく、ソフトランディング(軟着陸)ひいては持続可能な社会へ転換するきっかけとすべき重要なキーワードだと言えます。

参考URL:

[ん! ピークオイル時代を語ろう]
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/forum2/

[訳者 益岡賢氏による 本の紹介]
http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/books/peakpanic.html

[チェンジ・エージェント:システム思考で考えるピーク・オイル]
http://change-agent.jp/news/000043.html

[もったいない学会]
http://www.mottainaisociety.org/mainmenu.html

12:28 午前 環境 | | コメント (1) | トラックバック (1)