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2007年1月29日 (月)

エネルギー基本計画への意見

先日の記事でも書きましたが、3年に1回のエネルギー基本計画のパブコメが本日〆切です。なんとか私なりの意見を書いて送付しましたので、以下に掲載したいと思います。日本はまさに多くの面で転換点を向かえています。従来の方向性の延長線上には正しい答えは無い、というのが意見の骨子です。

1. 全般

日本の現在のエネルギー需給構造は、先人の多大な努力により積み上げられて来た結果であり、特に戦後の高度成長期から20世紀末のバブルの崩壊まで、石油ショックの一時期を除き、一貫してその規模を拡大し続けて来た。その規模に対してその内容は地球規模の国際的な情勢に対して余りにも脆弱であり、エネルギー自給率4%という数値は、その危機的な状況を端的に表している。また、この危機的な状況は過去の日本のエネルギー政策が表面的な経済成長のみを優先し、将来を見据えた政策を実施してこなかった帰結と考えることができる。近い将来、以下の制約条件により、国内のエネルギー需給構造は大きくバランスを崩すことが予測され、その過程では多大な努力と犠牲を伴う。

  • 石油資源の急速な供給不足と価格高騰(生産量のピークを迎え、中国などの急速な需要拡大に追随できない)
  • エネルギー自給率の低迷によるエネルギー安全保障上の危機(海外からのエネルギー資源の確保が急速に困難となる危険性)
  • 地球温暖化に伴う気候変動対策の急務(予測を超える速度で進む状況に、早急な対策が求められる)

上記の状況より、今後10年間のエネルギー政策を勘案するためには、過去の積み上げの延長ではとても対応することはできない。その意味で、この改定案は、今後10年間のためのエネルギー基本計画としては、およそ不十分なものであり、国内外の広範な英知の結集による具体的な検討と審議を持って再考を要すると考える。

2. 「第1章 基本的な方針」について

 石油資源の生産量が、近い将来ピークを迎えるいわゆる「ピーク・オイル」について真摯にその将来を予測し、適切に対処する必要がある。事後的な対応は、国内経済に対して甚大なダメージを与え、過剰な反応により環境制約を忘れた安易な対応を招く可能性がある。例えば、税制やインセンティブなどを駆使し、具体的な数値目標を掲げた石油消費量の削減プログラムなどが考えられる。

 第2節「環境への適合」

 地球温暖化問題を筆頭とする「環境への適合」については、第一には果敢な数値目標を持つ省エネルギーを図り、CO2排出量の削減を確実に行うことが必須である。具体的には、2030年までに30%削減、2050年までに50%削減、2100年までには80%以上のCO2排出量削減を実現することが必須である。CO2排出量の削減への取組みは、産業から民生、運輸までに幅広い分野にまたがって、継続的にかつ効果的に実施する必要がある。従来、供給側から考えられて来たエネルギー政策を、需要側から積極的に考え直すことが必要である(需要の合わせた供給:デマンドサイドマネジメント)。

第二に掲げられている原子力発電については、放射性廃棄物の問題や事故時などの放射能放出の危険性から決して「クリーンなエネルギー源」と呼ぶことはできず、その利用は必要最小限に留める必要がある。その意味で、環境への適合のための手段としては適切ではないと考えられる。

 第三に掲げられている再生可能エネルギーについては、多くの可能性と選択肢があり、太陽光、風力、バイオマスそれぞれの特性を十分に考慮して個別に大胆な取組みをすべきである。この改定案にはその具体的な取組みがほとんど触れられておらず、誠に残念である。それぞれの再生可能エネルギーについて世界的にも技術開発から普及の為の施策までより広範で深化した取組みが求められており、その成果は世界中のエネルギー問題、地球温暖化対策に生かすことができる。これは、将来の日本の主力産業と成りうるものである。よって、この項目を第二に繰り上げ、取組みの優先順位をより高くすべきである。

 第3節「市場原理の活用」

 市場原理の活用では、従来の単純な「自由化」では、エネルギー問題の解決は難しく、環境税/炭素税などの税制や適切なインセンティブを伴う政策を確実に実施していく必要がある。特に、地球温暖化対策に資する環境価値に対するインセンティブを強化し、十分に機能していない現在のRPS法の反省を踏まえて、再生可能エネルギーの固定価格買取制度などの海外の先進事例などを参考にしつつ、日本の英知を結集した新しい制度へ果敢に取り組むべきである。そして、この制度は従来からのエネルギー需給構造を根本から変える原動力となることが望まれる。特に再生可能エネルギーを中心とする新しい産業が急速に立ち上がり、将来の日本のエネルギー供給を担える様になることが重要である。

3. 「第2章 長期的、総合的かつ計画的に構ずべき施策」について

 従来から、「新エネルギー」という日本独自の用語が使われてきたが、再生可能エネルギーの利用拡大は世界の趨勢であり、その利用は将来にわたって重要な意味を持つ。そこで、もはやひとまとめの新エネルギーとしての扱いではなく、個別にその技術開発や普及を促進し、身近に利用する時期に来ていると考えられる。また、第3節にあるように新エネルギーが「現時点で出力の不安定性やコスト面での課題」があることを強調するあまり、その普及が阻害されてはならないと考える。エネルギーの転換期においては、既存のインフラに対してある程度の不整合が生じる場合はあるが、それを様々な施策によりスムーズに乗り越えることが重要である。

 運輸部門については、もっとも石油依存率が高いことから、再生可能エネルギーへの切り替えがもっとも急がれる部門であるが、その対策はもっとも難しいと考えられる。すでに指摘した「ピーク・オイル」を想定した場合、現在の自動車やトラックに依存した旅客や物流は、その仕組みを根本から変えていく必要があると考えられる。旅客や輸送の安全も考慮し、将来にわたってその手段をより安全で環境負荷の低いものへ転換していく取組みが重要である。例えば、旅客の公共交通への転換やモーダルシフトそして都市構造のコンパクト化などである。

4. 「第3章 エネルギーに関する技術及びその施策」について

 技術開発については、その予算配分を十分に検討する必要がある。国内においては再生可能エネルギーへの技術開発予算は十分とは言いがたい状態であり、民間企業での技術開発やベンチャー企業による研究開発もさらに加速する必要がある。その際に重要なのが、評価の仕組みである。開発している技術などについて、適切に評価を行い、最終的に十分な効果を得られる様にする必要がある。この「評価」の仕組みでは、第三者が社会や経済に与える影響も含めて、ライフサイクル的な観点からスムーズに、かつ公平に実施できる体制が望まれる。

 開発された技術を普及する仕組みも非常に重要である。税制や新しい産業の育成や支援などを含め、広範な施策により合理的に再生可能エネルギーなどの普及を図る必要がある。

                                                   以上

11:36 午後 エネルギー | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月28日 (日)

「不都合な真実」を越えて

やっと映画「不都合な真実」を見ました。昨年米国で公開されてから、米国内にとどまらず世界中で様々な反響を巻き起こしていることを聞き、なんとか早く見たいと思いつつ、国内での公開まで待つ結果となってしまいました。翻訳本「不都合な真実」もやっと1月に発売され、早速購入しましたが、著者自らの人生と地球温暖化への取組みを絡ませながら、多くの写真やデータを取り入れた素晴らしい本です。

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まず、最初に感じたことは、この映画が一人の人間が、地球温暖化による気候変動という人類全体の運命を左右する大問題に、全人生を賭けて取り組む姿を真正面から表現しているということです。地球温暖化については、その甚大な影響が明らかになるにつれ、多くの科学者、政治家、NGO、企業から多くの市民が解決のために取り組んできました。それらの人々の代表としてこの一人の政治家アル・ゴアが、この優れたドキュメンタリー映画に出演している様な気がしました。よって、地球温暖化という「不都合な真実」をすでに知っている多くの人々は、私を含め、この映画をみてとても感動し、勇気づけられたと思います。

地球温暖化は、米国の一部の政治家や企業にとって「不都合な真実」だったかもしれませんが、多くの人々がそれを乗り越えて「立ち向かうべき真実」として、解決に向けて着実に歩むことが重要だと思います。この映画は、地球温暖化をより効果的にプレゼンテーションする方法を示しているとも言われますが、それ以上に人間が困難に立ち向かい、より良い社会に変えることが、いかに尊いものであるかを教えてくれたと思います。学生時代から地球環境問題に取り組み、京都議定書などの国際舞台でも活躍し、大統領になる寸前まで上り詰めた政治活動、その後、1000回以上のスライド講演を地道に続ける、その粘り強さは本当に脱帽です。その活動を支える動機は、家族愛に根ざした人類全体への強い思いなのかもしれませんが、その思いが映画の全編に渡って伝わって来ます。

今年は、地球温暖化にともなう気候変動が例年にも増して大きくクローズアップされ、社会や経済が大きく動く年になりそうな予感がします。その動きを正しく捉え、正しい方向に進む仕組みを皆で整える必要があります。人間は、過去、多くの間違いを犯してきましたが、この地球温暖化への対応で間違えを犯すことは、人類の文明を滅亡へ導くものであるということが、この映画の中でも言われていたと思います。だからこそ、これは全ての人間にとって避けることのできない「モラル」の問題なのではないでしょうか。

「自分にできることから」という言葉がありますが、その際の動機の強さや目標によって、この「できること」の内容や範囲が明確に変わって来ると思います。「真実」を正確に理解することと、強い動機で「明確な目標」を持つことが重要だと、強く実感できた映画でした。

12:19 午前 環境 | | コメント (2) | トラックバック (12)

2007年1月19日 (金)

持続可能なエネルギー政策とは?

あまり一般には知られていないのですが、日本にも「エネルギー政策基本法」と呼ばれる法律があり、2002年に施行されています。その基本理念は、「安定供給の確保」「環境への適合」「市場原理の活用」となっていますが、全14条の非常にコンパクトな法律です。日本のエネルギー政策の憲法と呼ぶべきものがこの様なシンプルになった理由はいろいろあったのでしょうが、当たり障りのないものを急いで造ったという感は否めません。「エネルギー白書」はこの法律に基づいて年一回作成されていますが、詳しい政策については「エネルギー基本計画」で定められることになっています。実際に2003年に閣議決定された最初のエネルギー基本計画は基本的にそれまでのエネルギー政策を踏襲する内容になっていました。

じつはこの「エネルギー基本計画」が3年毎に見直しの時期になり今年改訂されます。そのための意見募集(パブコメ)が昨年12月から今月末(1/29)まで行われているのですが、ほとんど話題になっていません。内容は、もちろん近年の石油価格の急騰や地球温暖化対策などを配慮したもののはずですが、国の将来を左右する基本計画として十分なものかどうかをしっかり見る必要があります。主なポイントは、以下のとおりです。

  • 自立した環境適合的なエネルギー需給構造を実現するため、原子力発電を積極的に推進し、新エネルギーの着実な導入拡大を図る。
  • 石油等の化石燃料の安定供給に向けて資源外交の積極的展開、強靭なエネルギー企業の育成等戦略的・総合的な取組みを強化
  • 省エネルギー政策のいっそうの充実・強化を図るとともに、地球温暖化問題に係る実効ある国際的な枠組み作りを主導する。
  • 技術により国内外のエネルギー・環境問題の制約をブレークスルーするため、技術力の一層の強化およびその戦略的な活用

特に環境への適合のための原子力発電への取組みの強化が強調されており、日本のエネルギー政策の国際的な特異性が現れた内容になっています。その分、自然エネルギーを含む新エネルギーへの取組みがほとんど強化されていないのが、とても気になります。唯一強化されているのが、いわゆるバイオ燃料への取組みです。しかしながら、バイオ燃料には食料や自然環境の持続可能性への懸念が付きまといます。

再生可能な自然エネルギーへの取組みを強化するにはどうしたら良いのでしょうか。日本は化石燃料のほとんど全てを輸入に頼りながらも、原子力や天然ガスそして石炭による電力の脱石油を進めて来ました(一次エネルギーの石油依存率は約50%)。しかしながら純国産エネルギーである自然エネルギーの普及は結果的にあまり進まず、日本のエネルギー自給率は、次のグラフの様に現在4%程度と低迷しています。

Energyss1_1

この自給率を2050年までに50%まで増加させようと考えた場合、単純に次のグラフの様に省エネによりエネルギー消費量を半分にした上に、自然エネルギーの供給量を現在の6倍にする必要があります。

Energyss2

これは果たして可能なのでしょうか?その為のひとつのステップとして2020年までに、自然エネルギーの割合を20%まで高めようというキャンペーンが、国内のNGOを中心に行われており、私も賛同しています。すでにEUでは、2020年までに再生可能エネルギーの割合を20%にすることが戦略として決まっており、日本でも国内の事情を考慮した上での戦略が求められているのではないでしょうか。

以前にもご紹介しましたが、再生可能エネルギー自給100%プロジェクトやモデル事業が始まっており、地方自治体でも昨年、東京都が他の自治体に先駆けて「再生可能エネルギー戦略」を発表し、2020年までの利用目標として20%の再生可能エネルギーの割合をめざしています。これらのバックキャスティング的な目標設定やビジョンにより、次のグラフの様に日本のエネルギー自給率が増えることが可能かどうか、私達は考える必要があるのではないでしょうか。

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すでに取り上げたピークオイルと地球温暖化を取り巻く世界の情勢を考えると、日本は否が応でもエネルギー自給率の確実な向上を考えるべき時代が迫っています。問題が起きてもすぐには対応できないのが、エネルギー問題の難しいところです。やはり数十年後を見据えて経済や社会の仕組みも変えるような持続可能なエネルギー政策への取組みが必要かつ不可避なのではないでしょうか。




11:08 午後 エネルギー | | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年1月 1日 (月)

2006年の振り返り その2

明けましておめでとうございます。
本年も「サステイナブルなもの」をよろしくお願いします。

新しい年を迎え気持ちを新たに、持続可能な社会の実現に向けて着実に活動をしていこうと思います。今年のテーマは、「結果を残す活動をする」ことと、「将来を見据えた活動をする」ことです。指標なども活用しながら、しっかりがんばって行きたいと思います。このブログでもその成果をなんらかの形で出せればと考えているところです。

さて、2006年の振り返りの後半です。前半では、比較的将来のビジョンやあるべき姿に関する記事が多かったのですが、後半は現実を見据えた重いテーマが多かった様な気がします。将来のビジョンを大切にしながらも、足元の現実をしっかり把握しながら前に進みたいものです。その意味で、昨年6月のヨーロッパ訪問は非常に貴重な経験でした。

[スウェーデンのバイオマスエネルギー事情] 木質バイオマス利用の先進国の事例です。

[スウェーデンの「持続可能な発展」指標] スウェーデンの持続可能性指標の紹介です。

[スウェーデンの脱石油宣言] 一歩先を行く2020年までの脱石油宣言です。

[ピークオイルと地球温暖化] 石油資源に関する現実と地球温暖化との関係に迫ります。

[木質ペレットはいかが?] 再生可能エネルギーの現実的な可能性のひとつです。

[スウェーデンの「持続可能な発展」指標 その2] 2006年に改訂されました。

[スターン・レビュー:気候変動の世界経済への影響] 厳しい現実と予測を多くの人が直視する必要があります。

10:15 午後 環境 | | コメント (2) | トラックバック (0)