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2007年10月 8日 (月)

地域発!地球温暖化防止戦略を考える

地域の知恵や資源を活かした環境エネルギーへの取組みが注目されています。以前にもご紹介した環境エネルギーセミナー(環境エネルギー政策研究所ISEP主催)が、まだまだ残暑が厳しい9月13日に開催され、私自身も司会者として参加しました。国内外の環境エネルギー政策を取り巻く状況や課題を整理し、より具体的な2つの実践報告(横浜市、飯田市)や研究報告(永続地帯指標)などから、新たな地域発の温暖化防止戦略についての非常に興味深い議論が行われました。

最初に、飯田哲也氏(ISEP所長)より国内外や地域の環境エネルギーを取り巻く政策課題について以下の様な問題提起がありました。自然エネルギーの世界市場が10兆円近い規模に拡大するなか、ドイツではこれまでの普及政策により風力発電の総設備容量が2000万kW以上に達し、風力産業の拡大や雇用創出効果などを含め「3つの配当」を得ることに成功しました。さらに、太陽光発電でも同様の効果が期待されており、EU全体では2020年までに30%という再生可能エネルギーの導入目標値を設定しています。一方、日本国内では従来型の補助金政策(供給・技術プッシュ型)が続いており、これを需要側の市場や地域社会を主体にした「プル型」に変える必要性を指摘しています。欧州での「環境エネルギー事務所」の事例や日本国内での市民風車や地域エネルギー事業への取組みなどについて紹介がありました。

続いて、環境省により3年前から行われている「環境と経済の好循環のまちモデル事業」を中心に、環境省環境計画課の大倉氏から基調講演があり、京都議定書達成に向けた国の取組み状況と合わせてこのモデル事業などの紹介がありました。平成16年度から始まり3ヵ年で全国19の地域で各地域の特徴を活かしたモデル事業。林業が参加な地域での木質バイオマスの熱利用、都市部でのヒートアイランド対策、省エネ事業や自然エネルギー(太陽光、BDFなど)の導入整備事業が実施されました。平成16年度に事業がスタートした地域では平成18年度までの3年間で事業がすでに完了し、その評価が現在行われています。環境省では地域における自然資本の活用を重要視しており、地域の特性を活かした都市計画の見直しや化石燃料に頼らず地域内で資金や資源が循環する地域づくりに関する事業を来年度に向けて検討しています。

地域発の実践事例として横浜市で2003年にスタートした風力発電事業について横浜市環境創造局の関川課長から報告がありました。事業化のポイントは、「目に見える“モノ”で示す」ための大型風力発電、環境教育による「次世代に向けたメッセージ」、「最小の費用で最大の効果を得る」ための民間資金の活用、そして「市民と共に取り組む」ための市民参加です。もともと市役所内の起業アイデアの募集の中で生まれたもので、住民参加型市場公募債(かざぐるま)による資金調達(2億8千万円)とY-グリーンパートナー制度(年間4500万円の企業からの10年間の協賛)によるグリーン電力証書の活用。昨年までに施設はすでに発電を開始しており、横浜港の新たな観光・環境教育施設としても注目を集めています。

2つめの地域エネルギー事業の実践として、飯田市での公民協働事業である「おひさま進歩エネルギー(有)」の挑戦とその成果について竹村氏から紹介がありました。飯田市では平成16年度に上記の「まちモデル事業」に採択され、様々な普及啓発事業や木質バイオマス事業の他、太陽光発電と省エネ事業を民間の事業会社への助成事業として実施しました。省エネ事業では、「商店街ESCO」として中小規模の施設に対する省エネの診断を行い、13ヶ所の施設の省エネ改修をサービサイジングとして提供。中心市街地に隣接し、もっとも規模が大きい飯田市美術博物館について、空調設備を高効率・省エネ型に更新し、40%近い省エネを実現。また、市内38ヶ所の保育園などの公共施設に太陽光発電設備を設置し、発電した電力を設置した施設に販売すると共に、グリーン電力証書の販売やマスコットキャラクター(さんぽちゃん)が登場するパネルシアターによる環境教育を実践しました。

研究報告として千葉大学公共研究センターとISEPが共同研究を行った「エネルギー永続地帯」の紹介が千葉大学の倉阪准教授よりありました。「永続地帯」は、食料とエネルギーの自給が可能な地域を評価する指標で、市町村などの地域でその自給率を評価する試み。2006年度の研究では市町村あるいは都道府県毎に民生用電力需要対する再生可能な自然エネルギーの割合(自給率)の計算を行っており、自給率が20%超える都道府県は大分県、秋田県、富山県、岩手県の4県で、地熱発電や小水力発電の占めるウエイトが大きい。多くの都道府県で小水力(1万kW以下の水路式)が大きなウエイトを占めており、従来はあまり注目されて来なかった小水力の重要性を指摘しています。小水力は全国の自然エネルギーによる発電量の約6割を占めているが、地熱は大型の発電施設が多く18%、風力が12%、太陽光発電が6%。エネルギーの自給率が100%を超える「100%エネルギー永続地帯」の市町村は76あるが、逆に需要の大きい都市部では1%以下と自給率は非常に低く、グリーン電力証書の購入の様な形が期待されています。

セミナーの最後には、飯田所長をコーディネータにパネル討論を開催し、講演に対する会場からの質問などを受けて、引き続き各パネリストの方々から細かい回答やコメントなどがありました。短い時間の中でしたが、国全体の政策から、地域でのより具体的な事業の方向性や地域政策での指標の活用まで非常にレンジの広い具体的な論点が取り上げられた中身の濃いパネル討論でした。

なお、セミナーで発表された資料や議事録の一部は、以下のISEPのページからダウンロード可能になる予定ですので、ご参照ください。

ISEP環境エネルギーセミナー(第2回):「地域エネルギーによる新たな温暖化防止戦略」
http://www.isep.or.jp/event/070913sympo.html

05:13 午後 環境 |

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