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2009年3月30日 (月)

これから10年間ですべきことは

先週開催された首相官邸主催の中期目標検討委員会(地球温暖化問題に関する懇談会)を傍聴して来ました。これまで5回の委員会が開催され、複数の研究機関による分析が世界モデル、日本モデル、経済モデル(日本)それぞれについて行われ、6つの選択肢について細かい議論が続いている状況です。もっとも低い目標値は+5%(1990年比)ですが、これはBAU(現状維持)のケースで、あくまでリファレンス(参考)としての数値とすべきものです。もっとも高い目標値は-25%(1990年比)ですが、これは国際的に先進国に求められている目標数値でもあります。この先進国で-25%という数字も、様々な捉え方があるようです。先進国全体で-25%を達成する際に、それを均等な限界削減費用(コスト)で分配するなどすると、より削減コストの低い国は目標値が高くなり、削減コストの高いに日本などは目標値が低く設定されることになります。政府としては、このような分析結果を、今後の国際交渉の場で展開することを考えているように見えます。

現在、分析を行う研究機関としては、経産省系の日本エネルギー経済研究所(IEEJ)と環境省系の国立環境研究所(NIES)の2つが日本モデルでバトルをしている状況です。国立環境研究所では、これまでの2050日本低炭素社会シナリオ研究の成果を活かして、3つのモデルを全て分析を行い、目標値-25%(1990年比)に対する分析を唯一行っています。今回の発表資料の中ではさらに目標値-40%(1990年比)の数値も参考として含まれていました。長期的かつ幅広い視点での分析を行っている国立環境研究所のチームには、これからも是非がんばってもらいたいと思います。

これまでの分析では、温暖化対策に伴う経済的な費用(コスト)を評価基準としていましたが、これには大きな問題があります。この「費用」だけの評価では、気候変動やエネルギー安全保障に関わる将来のコストや新たな低炭素社会の産業や脱化石燃料によるメリットなどが考慮されていません。つまり、最近話題になっているグリーンニューディールの様な考えはまったく含まれていないのです。やはり、気候変動への取組みには、現在の社会や経済の方向性や仕組みを変えることを前提に考えることが重要だと思います。

一方、国内外の環境NGOでは、目標値-25%を最低ラインとして、気候変動の危機を回避するために-30%や-40%(1990年比)などの目標数値を求めています。中期目標検討委員会の直後に開催された国内の環境NGOによる記者会見では、この検討委員会に対して、以下のように厳しく批判を行っています。これらは政府の委員会による検討に抜けている視点であり、しっかり受け止めて欲しいと思います。

  • CO2排出量を90年より増やすオプションや京都議定書の目標値よりも低いオプションが提案されており、日本としての低炭素社会づくりへの意欲が全く見られない。科学の要請に反し、国際交渉の足を引っ張るもので、後ろ向きの提案である。
  • 対策費用ばかりが負担として強調されているが、対策をとらない場合の悪影響へ対応する費用との比較は全く考慮されていない。
  • 温暖化対策によるエネルギー削減で得をする費用が、モデルによっては過小評価されている。
  • 新たな温暖化対策費用追加による雇用創出効果、内需拡大の経済効果が全く考慮されていない。
  • そもそも温暖化防止のために何がどこまで必要なのかというバックキャスティングの発想で議論が行なわれていない。中期目標については、地球の平均 気温上昇を産業革命前に比べ、2℃よりはるかに低く抑えるため科学的に整合した野心的な削減目標(1990年比25~40%削減)を掲げるべきである。
  • これまでの議論に市民社会の参加・関与が全く認められておらず、産業界の主張に偏った議論が行なわれている。今後のプロセスについては、市民・NGOの参加を確保すべきである。

政府が中期目標を決定する6月に向けて、しっかり注目して行きたいと思います。

08:05 午前 環境 |

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