2005年6月17日 (金)

サステイナブルな音楽 -バッハその3-

バッハのサステイナブル(持続可能)な側面についての「その3」になります。バッハの活躍した国といえばドイツですが、その昔は「東ドイツ」と言われた地域になります。これほど時を越えてグローバルに演奏され、聴かれるバッハの音楽ですが、バッハ自身はこの旧東ドイツの限られた地域で生涯を過ごしました。

バッハ生誕の地アイゼナッハは、森林地帯に囲まれた緑ゆたかな町だそうです。もちろん私自身は行ったことはありませんが、旧東ドイツ地域は西側に比べると工業化されていない面も多いのでは推測されます。この地を「バッハ巡礼」の最初の地とするケースも多いということで、ここから順番に東に移動して最後のライプチッヒにたどり着くのがお決まりのコースのようです。

バッハの住んだ地名、年代と職業は以下のとおりです(「バッハ名曲・名盤を聴く」参照)。

  • アイゼナッハ:1685-1695 (生誕の地)
  • オールドルフ:1695-1700 (少年時代)
  • アルンシュタット:1703-1707 (オルガニスト初任)
  • ミュールハウゼン:1707-1708 (教会オルガニスト)
  • ヴァイマール:1708-1717 (宮廷専属オルガニスト)
  • ケーテン:1717-1723 (宮廷楽長)
  • ライプツィヒ:1723-1750 (教会音楽監督)

ドイツといえば先進的な環境や新エネルギーへの取り組みで知られており、2002年4月には「国家の持続可能性戦略」を閣議決定しています。この戦略の進展状況に対しては2年毎に報告書を出すことを自ら義務付けています。具体的な取り組みについては、「ドイツ発、環境最新事情」などに詳しく書かれていますが、「ドイツ環境ジャーナル」というブログでも最新の状況を知ることができます。

ドイツの持続可能性戦略の状況を調査する為に、バッハゆかりの地も訪れるというのはとても良い企画だと思うのですが...

11:06 午後 音楽 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年6月 5日 (日)

サステイナブルな音楽 -バッハその2-

バッハの音楽のサステイナブル(持続可能)な側面を引き続き考えたいと思います。

バッハの生きた時代は、18世紀前半(1685-1750)ということで、いわゆるイギリスで18世紀後半に起こった産業革命の前の時代になります。この頃の世界人口はまだ6億人以下で、その増加率も小さく、大気中の二酸化炭素濃度も270ppm程度で安定していました。大雑把な言い方をすれば、持続可能な社会を形成していたということになります。バッハの没後、イギリスの産業革命を皮切りに、今日までの経済の成長が始まり、人口の爆発的な増加や大気中二酸化炭素の増加を招いています。

バッハの音楽は持続可能だった時代の最後の音楽だったということもできるかもしれません。バッハの音楽はいわゆるポリフォニー(複旋律音楽)という様式で、複数の旋律が独立して一つの音楽を作っています。これに対してバッハ以降の音楽ではモノフォニー(和声付単旋律音楽)が主流となり、一つの旋律が支配的に扱われることが多くなります。私にはポリフォニーのもつ自由さが、自然や宇宙の持つ規則性の中にある自由な動きに重なって見えます。対照的にモノフォニーの音楽は、人間の意思や感情をストレートに表したものに感じられます。自然の持つリズムを感じられるというのは、持続可能性にとってはとても重要なことではないでしょうか。

バッハは、生涯を通じて20人の子供をもうけたと言われていますが、これが持続可能かどうかというのは議論が分かれるところです。子供の教育にはとても熱心だったということで、子供達の為に、練習曲をいくつも作っており、それらの曲は今でもピアノを学習する人の大切なレパートリーとなっています。中でも「インヴェンション」は、ピアニストであればほとんどの人が練習をするのですが、多くのピアノ初心者が挫折をしてしまいます。右手と左手が独立して別の旋律を引くというポリフォニー様式が、やはり「壁」となっているようです。サステイナブルな音楽を目指すには、ここはじっと我慢をして練習して、自然のリズムが感じられる様になりたいものです(自戒を込めて...)。

09:32 午前 音楽 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年5月29日 (日)

サステイナブルな音楽 -バッハその1-

私にとってのサステイナブル(持続可能)な音楽といば、バッハ(Johann Sebastian Bach 1685 - 1750)の音楽です。これは、特定の音楽家を選んで死ぬまで聴くとしたらバッハを選ぶでしょうし、自分の子供や孫にも聴いてもらいたいと思うからです。また、300年近く前の音楽が、これだけ多くの人々に愛されているという理由だけでも十分にサステイナブルだと思います。さらにバッハは、自分が作曲した曲を何度も別の機会にリサイクルして使っていて、世俗カンタータとして作曲したものも、歌詞などを変えて教会の為のカンタータにしていたりします。さらにバッハの曲は多くの作曲家や音楽家がカバーして、まったく新しい音楽として演奏しています。やはり、バッハの音楽の地域に根ざした普遍性、多様性や精神性などの特性がその音楽の持続可能性を支えていると思います。

バッハといえば、オルガンやチェンバロなどの鍵盤楽器のための曲が有名ですが、マタイ受難曲などの声楽付の大曲に影であまり聴かれる機会のない「カンタータ」と呼ばれる作品群があります。教会カンタータが約200曲、世俗カンタータが10曲程度残されており、合唱曲あり、レシタティーボやアリアなどの独唱曲あり、シンフォニアと呼ばれる器楽曲ありと、多様性に富む作品ばかりです。古くはバッハ演奏で有名なカール・リヒターが教会カンタータ約70曲を録音し、26枚のCDとして発売したものがあります。この演奏ではミュンヘンバッハ管弦楽団/合唱団ももちろん素晴らしいのですが、独唱陣が最高です。あのデートリッヒ・フィッシャー・ディースカウやペータ・シュライヤーの素晴らしい歌声を存分に聴くことができます(二重唱まであります)。

バッハの教会カンタータの全曲録音としては、アルノンクール(Nikolaus Harnoncourt)/レオンハルト(Gustav Leonhardt)のものがすでにあり、トン・コープマン(Ton Koopman)が世俗カンタータも含めた全曲録音を終えて、独自レーベルで随時発売中です。ガーディナー(John Eliot Gardiner)は、2000年のバッハ没後250周年に、1年間で80回以上の演奏会を開催してバッハの教会カンタータの全曲演奏ツアー(バッハカンタータ巡礼)を行っており、その録音の一部などがしばらく前に10枚のCDで発売されましたが、それ以降は中断されていました。それが、最近、ガーディナーのモンテベルティ財団が新しいレーベルSoli Deo Gloriaを立ち上げ、そこからこの2000年の録音が発売されています。自分のレーベルを立ち上げてまで、世の中に演奏録音を出すほどバッハのカンタータには大きな魅力があるということでしょう。このまま全曲分発売されると、良いのですが... ちなみにこのCDパッケージは環境に配慮するために紙で出来ていて本のようになっており、プラスチックが使われていません。

11:31 午後 音楽 | | コメント (0) | トラックバック (0)